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介護保険

介護保険制度は、超高齢化社会が急速に進行するなか、それに伴って急速に膨れ上がる介護費用をどうやって捻出するかという課題に応える形で、平成12年(西暦2000年)にスタートした。
「老人ホーム、介護施設とは」の項で書いた「どんなシステムで」に該当するのがこの項になります。

介護保険制度の理念と精神
 介護保険は老人福祉と老人医療に分かれていた高齢者の介護を再編し、利用者本位の立場で、個人の意思を尊重しながら自立した生活の継続を目指すことを標榜している。
そして、従来のサービスと異なる点として
  1.  利用者本位の立場で、自らの選択でサービスの利用が可能な事
  2.  福祉サービスと医療サービスが一体的に提供できる事
  3.  サービス提供主体として民間の参入を図り、競争原理の導入で良質なサービスの提供が期待できる事
が上げられている。


介護保険制度のシステム
 介護保険制度は誰も避けては通れない「加齢」という状態を、皆がお金を出し合って、介護状態に備えようという保険制度です。
システムはこのようになっています。
  • 40歳以上の方が保険料を負担

  • 受給権者は65歳以上の要支援者・要介護者(但し、65歳未満40歳以上であってもパーキンソン病や脳血管疾患などの15の疾病で要支援・要介護状態になった者は介護保険制度が利用できる事となっている。では65歳未満の方と15疾病以外の方で介護が必要となった方はというと、支援費制度を利用して介護を受けることになります。

  • 全体の運営費用は保険料で50%を、残りの50%を公費で賄います。(国が25%、都道府県と市町村が各12.5%となっています)

  • 保険者(運営主体)は市町村が担い、要介護認定、保険給付の設計と費用の支払いを行います

  • 応分負担の考えにより利用者からも原則1割の自己負担金額を取ります(所得金額によって自己負担金は異なりますし、原則1割と書いたのは、費用を拠出する市町村及び都道府県によって財政状況が逼迫しているところもあれば比較的余裕があるところもあるので利用者の負担金額に関してはその裁量を運営主体である市町村に委ねられているからです。
*支援費制度・・・障害者の介護については介護保険のような保険料制ではなく、全額が公費で賄う措置制度でした。その点では全く制度の考え方が異なります。
つまり介護保険では加齢は誰にでも訪れるもので、万一介護状態になった時のために皆で保険料を収め備えましょうという考えで、支援費は運悪くその人がそういう状態になったので全額公費で賄いましょうという考えでスタートしたのですが、国の財政が破綻したち行かなくなったので2003年4月から支援費制度になり自立支援法に移行し、障害者からも介護保険と同様に利用者から負担金をとり、将来的には介護保険と統一したいという思惑があったようです。


 
被保険者・受給権者・保険料

第1号被保険者第2号被保険者
対象者65歳以上40歳以上65歳未満の医療保険加入者
受給権者要介護者・要支援者15疾病の要介護者・要支援者
保険料負担市町村が徴収医療保険者が医療保険料として徴収し、一括納付
賦課・徴収方法所得段階別定額保険料
年金額一定以上は天引き、他は普通徴収
健保:標準報酬×介護保険料率
国保:所得割、均等割りに按分

介護保険の見通し
 介護保険制度は上述の理念とシステムでスタートし、様々な調査やデータや将来予測を踏まえ、定期的な修正と見直しを図ることとなっていて、平成18年4月(2006年)に介護保険制度は改正された。
改正の背景の最大の理由は急増する要介護者の増大に、介護費用が膨らみ財政的破綻をきたしたからと言われている。
厚生労働省は平成16年10月に10年後までの保険料と給付費の試算を発表している。
その中で第一号被保険者の保険料の引き上げと、給付の効率化と重点化を打ち出している。
噛み砕いて言うと、現在のスピードのまま超高齢化が進展すると、第二号被保険者の年齢を40歳から20歳に引き下げ保険料収入の増大を図ることが検討されていたが、年金問題をはじめこれ以上現役世代に負担を強いると、反発と経済の停滞に繋がりかねないと判断し、先ずは、直接の受益者への負担と給付の抑制が改正介護保険で打ち出されたと言われている。
例えば、いくつかの事例を上げると
  • 介護判定の厳密化による実質的な介護度の引き下げ・・・改正介護保険が施行される1年以上も前から、介護認定の更新審査でたくさんの方が介護度の判定で従来に比べ介護度が下がった。
  • 予防給付という考えを導入し、要支援者には使えるサービスの内容と量を制限した
  • 要支援者・要介護1の人にはベッド及び電動車イスの貸与を原則中止した
  • 訪問介護の内容を厳密化・・・従来は認められていた身体介護を使っての散歩は認められなくなった。(改正介護保険では介護予防プロブラムの中で筋力低下を防ぎ自立した生活の継続を打ち出しながら、片方では引きこもりと筋力の低下を補完する意味合いの濃い散歩が認められなくなった)又、掃除や洗濯、調理などの生活援助というサービスは連続して1.5時間以上は使えなくなったなど。
等が上げられる。勿論、これに止まらずサービスの質的向上のための施策も打ち出された。
しかし、今回の財源確保のための施策は自己負担金額の引き上げと第2号被保険者の年齢引き下げを見据えたものとの指摘もある。

今回の介護保険の改正が如実に数字に表れているのが下の表です。

介護サービスの受給者の推移

平成15年度平成16年度平成17年度平成18年度
年間実受給者数3706.44136.34398.44295.6
*厚生労働省発表データより、年間実受給者数とは1年間に一度でも介護予防サービスまたは介護サービスを受給した人の事。単位は千人
 
受給者数が年を追う毎に増加していたのが、平成18年度(平成18年の4月~平成19年の3月)は減っている。
この平成18年の4月に改正介護保険は施行されている。



介護保険が抱える問題
  • コムスンやニチイ学館等の不正請求や内容の誤魔化し改ざんに見られる福祉とビジネスの問題・・・介護保険がスタートした時に厚生労働省が掲げた民間活力の導入による効率化は、他の産業分野ではビジネスの効率化は有効に機能しても介護という福祉分野では売上偏重、利益優先という介護とは相いれない結果を招いた。

  •  サービスの質的向上・・・ケアマネージャーやヘルパー等の介護資格が他の資格と同様に考えられ、介護の理念や精神を置き去りにされ、結果サービスの質的低下やトラブルを招く事に。

  •  最大のサービスである訪問介護従事者の低賃金と過酷な労働条件・・・数ある介護サービスの中でも最もニーズの強い訪問介護の担い手であるヘルパーさんの給与は低賃金のうえ重労働。利用者の家から家への移動時間も待機時間も給与には反映されないだけでなく、移動手段の車のガソリン代や電車・バスの代金も支給されないのが大半である。そんなヘルパーさんに質ばかりを望むのは・・・?

  •  複雑化・細分化される制度を利用者が理解できずに起きる現場でのトラブル・・・介護現場で働く人でさえ、自分のサービス分野以外の事は殆ど知らないのに、利用者や同居者が各サービスの細則やルールを知らないのは当然。しかし、それが思わぬトラブルの元に。例えば、利用者に同居家族がいる場合、洗濯は利用者の衣服だけ、調理も利用者の食事だけ、掃除は利用者の居室だけで窓ふきはダメ。ケアマネージャーの役割や業務の範囲は・・・?